「マジですごくヤバいんだって!」
これだから今の若者は・・・と言われんばかりの語彙力のなさ。
現在の女子高生は「マジ」「ヤバい」「ウケるw」の3語だけで会話可能ということを聞いたが、まさにそれを伝えたい作品なんだろうと思う(違うか)
この作品は、小説投稿サイトに投稿していて書籍化でウハウハの生活を夢見る女子高生「村上瑠花(むらかみるか)」の小説を、クラスメイト「桐崎虎(きりさきとら)」が読もうとしたところ、瑠花の作った異世界に飛ばされてしまうというお話だ。
作者以上に頭のいいキャラは書けないとよくいうが、本当にそうなのだろうか。
あらすじ
異世界に飛ばされた主人公・虎。そこは「語彙力」ならぬ「語威力」で戦う世界!!…だったが、守るべき王女も敵も何かもうポンコツで…? 主人公・虎は物語をハッピーエンドに導き、現実世界に帰れるのか!?
語彙力のなさすぎるヒロイン
異世界にいったらとりあえずエミリアとか綺麗系の子に出会えればいい。
この主人公も実際最初に出会ったのは瑠花にそっくりの「ミルカディア・バウムクーヘン」というとてもかわいい王女だ。
しかしこの子。語彙力がなさすぎる。
「どうか私と一緒になんかあのヤバすぎるやつをボコってください!」
「あなたからはマジで強い力を感じました! 私の魔法がピーンときてイケるかとおもったからすごくわかる」

伝わりそうで伝わらない絶妙の語彙力のなさ。文字もひらがなとかカタカナでとても頭が悪そう。
ただこの世界、一応勉強すれば語彙力は増えていくのだが、「マジ」「エグイ」とかはミルカディアにとって定番語句になっているようだ。
この世界の力(強者)は語彙力があるかどうか
異世界といえば剣や魔法のバトルが定番だが、タイトルにもなっているようにこの世界は語彙力のない世界。
したがってこの世界での力とは、語彙力がどれだけあるかにかかっている。言葉をより多く知っている者が強者であり戦いに勝てる戦闘システムなのだ。
ひとつの言葉にも同じ意味を持つ複数の言葉が存在する。それらを駆使して攻撃・防御魔法(のようなもの)が展開されていく。
例えば「あざむく」と敵が言った場合、それよりも難しい「欺瞞」と答えたほうが勝利となる。
日本語だからこそできるこの戦い方は斬新で、瑠花が作った世界だから異世界の登場人物が全員日本語を使っていても誰もツッコむことはできない安心仕様になっている。
そもそもなぜこの頭の悪い世界で戦いが起こるのかというと、どうやらこの世界には虎の他にもやってきている人間がいるらしい。
その中の語彙力に自信がある者が暴れているわけだ。また普通にファンタジーっぽい敵も存在しているようだ。
ごく普通の高校生・虎はその敵に勝つことができるのか?
やべーやつ
いくつもの外国語を操る敵「ムーサ」。
飲み込んだ相手の語彙力を吸収する能力を持つボス的キャラの戦闘が面白い。
今まで住人たちを飲み込み難しい言葉ばかりを発するため手出しができないのだが、この攻略法が実にお見事だった。
ネタばれになるので細かいところは省くが、相手の特性をうまく利用した攻撃方法だったように思う。
この話では1話で出てきた子の再登場もあり、ポンコツ感が増し加えられそこもポイントが高い。
決してシリアスにならないところが嬉しい作品だ。
1巻完結なのでぜひ読んでほしい
わたしもTwitterで見かけて興味をもった漫画で、語彙力のないアホそうな王女のかわいらしい顔に惚れた。
語彙力が戦闘力というのも斬新だが、ひとつの事件が解決すると主人公が元の世界に戻れるというのも意外と少ないのではないだろうか。
そして瑠花がネタに困ると虎が異世界に移動するという流れになっている。
ミルカディアも言葉を覚えるのだが、毎度異世界に行くたびにその語彙力がリセットされているのも面白い。ずっとアホな表情を見ていることができる。
敵だった者が仲間になっていく展開も王道で、個人的には中二病ちゃんが好きだった。
1巻表記がないためこれで終わりらしいのが残念。しかしよくまとまっているので不完全燃焼にはならないのは嬉しい。
超読みやすく絵もマジでヤバいかわいいのでぜひ読んでもらいたい。
作者の坂野杏梨先生は「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」のコミカライズ版や「STEINS;GATE比翼恋理のフューチャーはにー」なども描いている方でした。
現在は「さよならピーターパン」が連載されているとのこと。
今後も坂野先生の作品はチェックしていきたいと思う。